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「なぁ、加藤?」
気持ちよく吹く風に乗って堀田の声が加藤の耳へと届く。
「なに?」
「俺、明日誕生日なんだよ」
「うん、知ってるよ」
「でさー、ちょっと話があるんだよ」
「話?なんだよ」
「んー、まぁちょっと、明日話すよ」
「そ。プレゼントいる?」
「いらん」
二人は少しだけテンポ悪く会話をした。加藤は堀田の今まで見たことのないような寂しさとも悲しさとも違う不思議な表情に、違和感を覚えていた。
「そういえばさ、前言ってたYouTuberいるじゃん」
「うん、ハマってた人達?」
「そう、その人たちも解散しちゃった」
「まじか」
「なんかさ、俺が応援する人たちって大抵良いこと起こらないんだよね。俺が悪い運でも呼び寄せちゃってるのかな」
「違うだろ。ただ、その人たちがそうなる運命だっただけだよ。運命なんて他人にどうこうできるものじゃないよ」
「そっか、そうだよね」
加藤はいつもの曲がり角で堀田と別れると、唇を少し内側に巻き込んだまま大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出した。
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