十年越しの告白

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 夏の暑さが残る秋のある日。加藤と堀田は高校からの帰り道を歩いていた。グラウンドからは運動部の掛け声が聞こえ、別棟からは吹奏楽の音が鳴り響いていた。帰宅部の彼らはまだ騒がしい学校に背を向けて駅に向かっていた。  「なぁ、もうすぐハロウィンだって知ってる?」  加藤はダルそうにそう口にした。  「まだ随分先だけどな、どうした急に」  「いや、昨日百均に行ったらさ、もうハロウィンのコーナーがあって、もうそんな時期かーって」  「ふーん、仮装でもすんの?」  「しないわ。この年になってドラキュラとか狼男とか、本気でやるならまだしもノリでやるのは痛いだろ」  「仮装してトリックオアトリートって家に来てくれたらお菓子くらいあげるよ」  「やんないよ、けど、もしやるとしたら、そうだなー」    加藤は駅の階段を降りながらキョロキョロと辺りを見回した。    「こいつのマネでもしようかな」    加藤が指を指した先には犯罪者のポスターがあった。近年たまに見る地味ハロウィン。どこにでもいそうな人や、意表をつく仮装が斬新で先日もどこかのテレビ局が取り上げていた。  「お前、そんなしょうもないことすんなよ」  「お前知ってる?こいつ」  「そりゃ、その辺じゃどこの駅にも貼ってるし」  「まじ?よく覚えてんな。なんで殺人なんかしたんだろうな」  「知らねぇし知りたくねぇよ。犯罪者の気持ちなんて」  彼らは沈黙を埋めるかのように大して内容のない会話を続けた。別に話さなくてもいいようなこととか、前にも話したようなこと。スマホ依存症になりつつある現代人でも、人と歩く時はスマホに頼れない。  この時期は涼しいが、歩き出すとなんとなく暑くて、加藤は学ランのボタンを外しながら「あちー」と呟いていた。
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