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彼は里香に自分のリュックを背負わせた。そして彼女を背負って立ち上がる。
ロープを里香の背後に回してから自分の胸の前に持ってきて数回ねじる。両端を里香の足の外側から内側へと回りこませた。
仕上げにロープを自分の腹のあたりで本結びにする。鮮やかな手際だ。この結び方をすれば、手を離しても里香は背負われた状態で固定される。
手ぶらだった柚子に伝えた。
「里香のリュックを背負って。背中に何もないよりはマシだ」
噴石から身体を守るためだ。
「行くぞ! 柚子、走れるか?」
そのとき、里香が何かを伝えようと、口をぱくぱくと動かした。
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