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柚子は呪文のように心の中で唱えていた。
里香は死なせない。私たち、三人とも生きて帰る。
生き延びてみせる。
「…そこだ!!」
孝介が指し示す洞窟に飛び込んだ。
とたんに大きな噴石が立て続けに落ちてきて、入口を塞いでしまう。辺りは真っ暗になった。
「柚子、俺から離れるな」
孝介は里香と自分の身体を結びつけていたロープを解いて、彼女を地面に横たえる。
そして、ペンライトを点けた。
小さなライトだが思いのほか光量があり、遠くまで見渡せる。
「そこを見て」
指し示された地面には、無数の小さなふくらみが見えた。
「コウモリが丸くなってる」
「…いやっ!!」
「冬眠中だから動きは鈍いはずだ。なるべく音を立てないようにしよう」
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