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「里香…! どこにもいかないで。お願いだから。あなたは私の宝物なの。世界で一番大切なの!」
「…お母さん…近くにきて。顔を触らせて…」
柚子が里香の手をとり、自分の頬にぎゅっと押し当てる。涙が頬を伝い、里香の手を濡らした。
「…大好き…」
次の瞬間、里香の顔がカクンと横に倒れる。閉じた目蓋から、涙が一筋こぼれ落ちた。
「いやーーッ!! 目を開けて!! 里香ァァ!!」
孝介は慎重に脈をとると、首を横に振る。
柚子の慟哭が響き渡った。
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