七話

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七話

咄嗟に突き飛ばす。 「できるわけない、ミルセアとなんて」 「弟子だから?息子だから?些細な問題ですね。そもそも僕は本人じゃない、ミルセアさんに化けてるだけの偽物ですよ。代わりに想いを遂げた所でだあれも責めはしませんよ」 「離れろ悪魔め!」 「あらあらいいんですかそんな事言って、折角呼び出したのに腹を立ててトンボ帰りしちゃいますよ。貴方の魂と寿命なんて腹の足しにもなりません、そこをちょっとしたお愉しみで賄いたいって申し出たんだから願ったり叶ったりじゃないですか」 「ミルセアは僕の子かもしれないんだぞ、寝れるわけないじゃないか」 「でも貴方ミルセアさんの顔を思い描いて自慰に耽りましたよね?前だけじゃ満足できず後ろまでほじくって」 「やめてくれ!」 「正直になりましょうよ、貴方はミルセアさんが大好きなんです、めちゃくちゃに抱かれたいって思ってるんです」 耳を塞いであとずさるダミアンに詰め寄り、ミルセアの顔をしたダミアンが寂しげに微笑む。 「行かないで、師匠」 ああ。 「アンタが欲しい」 やめてくれ。 「ずっとずっと抱きたかった」 「もうよせ、ミルセアはそんなこと言わない。くだらない妄言であの子を貶めるのはやめてくれ」 「現実から目を背けてるのはどっちさ」 力なく跪くダミアンの顔を手挟み、ほんの少し上向かせ、悪魔が言った。 「俺の物になりなよ」 僕の弟子。 僕の息子。 本当に愛してた。 今も 「ミル、セア」 自身に縋り付くダミアンを抱き締め、その服をはだけ、首筋にキスをする。 「ッ、ふ」 「可愛いね。感じてるの」 ダミアンの茶髪を一房指に巻き付け、鎖骨のふくらみを吸い立て、乳首を摘まんでいじくる。 地下室の上には本物のダミアンがいる。今夜もまた師匠の身を案じ、眠れぬ夜を過ごしている。 「やっぱりだめだ……」 「可哀想で可愛いダミアン。いい加減楽になりなよ」 悪魔が酷薄に笑む。 「本物を助けたいんでしょ?」 冷たく固い石床に押し倒される。悪魔がダミアンに跨り、猥らがましく陰茎をしゃぶり、準備が整うと同時に貫く。 「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ぁあぁ」 霞む視界の彼方、獣性全開のミルセアがダミアンの腰を掴んで打ち込む。 「『ここ』も本物と同寸大ですよ、たっぷり味わってくださいね」 「ぐっ、ふっ、あッうっ、抜けっ、あぁ」 本物に聞かせまいと声を押さえ、されど押さえきれずに高まり、ドロドロに蕩けた顔で泣き叫ぶ。 「気持ちいいでしょ父さん、すっごい波打ってるよ」 「あッ、あッ、ミルセアそこッ、ふあぁッ」 気持ちいい。止まらない。めくるめく荒波に翻弄され理性が蒸発、しとどに涎をまきちらし腰を振る。 悪魔は根元まで深々押し込み、かと思えば快感を増幅する一点を突きまくり、発狂寸前のダミアンを容赦なく追い詰めていく。 「ねえねえ実の息子に犯される気分はどうだい、最高に背徳的でたまらないでしょ、こういうのが好きだって知ってるよダミアン・カレンベルク。大人しそうな顔して本当にどうしようもない淫乱だね、前が大洪水じゃないか!ほらほら上手にイッてごらんよ父さん、沢山出たら褒めてあげるからさ!」 「ミルセア、ぃくっ、も、やめ、ぬい、て、あっあッそこっ、おかしくなるッ」 ダミアンが激しく仰け反り絶頂を迎え、悪魔が衰え知らずの陰茎を引き抜く。 「今度はこっち」 疑問の眼差しを受け流し、またもやダミアンの上に跨り、白濁に塗れた陰茎を唇で浄め始める。 「許してくれ」 「駄目だよ。ちゃんと見るんだ」 ダミアンが腕で顔を覆うとするのを許さずこじ開け、再び勃たせた陰茎に後孔を添え、大胆に腰を下ろしていく。 「ンっ、ふうっ……は、ははっ。全部入った」 ミルセアがダミアンの知らない顔で舌なめずりし、繋がった腰をぐりぐり回し始める。 「童貞捧げたのは母さんに続いて二人目、かな」 夢なら早く覚めてくれ。 「ああンっ、ふぁあっすごっ、でっかくなったぁ」 悪魔がダミアンの上で跳ね回り、甘ったるく喘いだ直後に何かが爆ぜ、華奢な腰をぐっと掴んで突き上げる。 「ひゃうっ!」 可愛い声を出して仰け反る悪魔に続けざま杭を打ち込み、唇を吸い、縺れるように転げ回る。 「気持ちいいよ、父さん」 「僕もだ。ミルセア」 魔方陣の中心で悪魔と抱き合い、唇と肌を重ね、上になり下になり交わる。 嗚呼。 夢なら永遠に覚めないでくれ。 『契約成立です。お代はしかといただきました』 何度も絶頂し、何度も果て、漸く回復を遂げた頃には悪魔の姿は消滅していた。 地下室に残されたのは鶏の生き血で描いた魔方陣と裸の青年のみ。 「うっ、ぐ」 その夜、一人の魔女が生まれた。 『気持ちいいでしょ父さん、すっごい波打ってるよ』 そんなふうに呼ばせたかったんじゃない。 『気持ちいいよ、父さん』 そんなセリフ望んじゃない。 僕はただ、家族になりたかっただけなのに。 仮に悪魔の言い分が正しいなら、魔方陣の中心にミルセアが立っていた時点で、ダミアンの最愛は変わっていたのだ。
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