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「碧斗がさ…。
そんなに涙が出るくらい気になってて、大河をそんな風に思うならさ。
大河のことそれだけ大事に想ってるってことだよな?
あいつに伝えた事、あんのか?
おまえのその気持ち…。」
「ないよ。あるわけない。
自分でも分からないよ。
この気持ちがなんなのか。」
「大事に思ってんだろ?
それってさ。」
「ボクが?大河を?
なわけない。
それじゃまるでボクが大河のことを好きみたいじゃん…男同士だよ?」
「男だから?好きじゃない?」
「好きじゃなくはない…けど…。
でも。
そっちの、好き…?かどうかはわからない。」
「だから…そのまんまそうやって言ってみたら?どっちの好きかわからないって。だけど、気になるんだって。
あいつにさ。
寂しそうな大河のことが気になって仕方ないんだって。
ほっとけないんだって。
友情が一番な大河の気持ちを理解してるから、大河を見てると切なくて苦しいんだろ?
そんな、泣くくらいさ。
そのくらい、碧斗も大河を大事に思ってるってことだろ?
そのくらい…。
好きってことなんだろ?
あいつのこと…。」
「でも、そんな風に大河に言ったせいで、このボクたちの友情が壊れちゃったら?ボクが大河を好きだなんて言ったりしたら、きっとそんなことを聞いたら大河はボクのことキライとか、気持ち悪いとか思うかも…」
「俺たちそんな壊れやすい仲だったか?
その気持ち、伝えられたらあいつは嬉しいと思うぞ?」
「うれしい?まさか。あり得ない。」
「そうか?人から好きって言われて嬉しくないことなんてないだろ?
気になって仕方ないって、言われたらさ。
ましてや俺たちの仲ならなおさら。
もし俺ならその気持ちは嬉しいと思うけど?」
「そう…かな」
「わかんねぇけど。
気持ちは嬉しいとおもうし、その気持ちだけは大事に受け止めたいと思う。結果はどうなるかはわかんねぇけどな。」
静かに語りかけてくる恒介の声が心地いい。
そうか。そうだ。ボクはきっと。
ずっと好きだった。
大河の事。
多分あの時から。
8才の誕生日。
楽しいはずだったあの、人生最悪な誕生日に。
ボクのそばに寄り添ってくれた大河の事が…。
ずっと自分でも、今まで気づかなかったけど…。多分。その気持ちをずっと心の奥底に閉じ込めてきたけど。
その気持ちは、多分…、好きって気持ちだ。
「なんか…わからないけど…。」
「ん?」
「ごめんね…恒ちゃん」
「なんだよ、ゴメンて」
「違うか。アリガト…」
「うん…」
「でも、ボクもわからない。自分の気持ち。どうしたいのか…」
心に秘めていた想いを吐き出して、少しだけラクになった気がした。
だけど…。
なんとなく、自分の中の気持ちに気づいてしまった。
だから余計に…。
胸が苦しい。
多分ボクたちがこの先どうにかなるなんてありえない。そんな自分に多分、イライラしてた。そうだ。だから大河にあんな風に突っかかったんだ。自分の気持ちをどうしていいかわからなくて。
この思いどおりにならないこの気持ちに自分自身で、自分の中での整理がつかず、そんな自分に対してなんだか、むしゃくしゃしていたんだ。
結局ボクは自分の気持ちに整理がつかないまま。今もなんだかむしゃくしゃしてる。
恒介にちゃんに家まで送ってもらうほんの短い間、ボクのなかで何かが音を立てた。
胸の奥に閉じていた秘密の扉が開く気がした。
家に到着し、車を降りて窓越しに恒ちゃんに別れを告げ、過ぎ去る車を見送るとスマホがなった。
ミキからだ。
「碧斗?もー。なんで電話にでなかったの?何回も電話したのに。」
「あ、悪い、気がつかなかった。」
「いまから、会える?」
「あー、ゴメン、今日はつかれちゃってもう、寝るとこ」
「うそ。」
「え?」
「後ろ。もう、来ちゃってる…」
そのからかうような声がスマホからでなく後ろから聞こえる。
振り替えるとそこにはミキがたっていた。
マンションの前にいつからかミキは立って帰りを待っていたようだった。
ボクは軽く舌打ちしてた。
さっきからイラついていた上に、こんな、予定外の状況でますます苛立っていた。
もう、思いどおりにいかないことの全ての事柄めんどくさくなったような気がしてきた。
ムシャクシャして、全てをなげやりにしたい気持ちで一杯だった。
後ろから勝手に着いてくるミキを追い返すことはせず、二人でマンションの中に入っていった。
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