【弐】wat je nu kunt doen

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「すまない、カーティス。本当に、すまないッ!俺は部隊の衛生兵なのに、お前がこんな状態になっているのに気付いていなかった。俺が部隊の奴等をすぐに治療してやれてれば、ここにはまだ生き残った奴等がいたかもしれない。それに何よりもッ、俺は、お前がそこまで恐れる戦場でのことを全て忘れちまってんだッ!!すまない、カーティスッ……すまない!!」 熱い、目が熱くてぼやけてくる。 戦場で仲間助けられなかった悔しさと、戦場での記憶を覚えていない歯痒さを感じながら、それでも俺は今、カーティスが生きていてくれた事が何よりも嬉しかった。 「ア、あああ゛あぁッ………死に、たく……な…」 「生きてるんだな、カーティス。お前は、生きて俺の前にいるッ。ありがとう、生きててくれてありがとう、カーティスッ」 「………ッ………生き、て………る?オレ、は……いま、生きて………」 「ああ、お前は生きてるッ!カーティス、お前は俺が助けてやる。俺はイーグル大隊に配属された衛生兵、同じ部隊の仲間であるお前は絶対死なせたりなんかしねぇ。だから……安心してくれ」 生きている。そう力強く言葉を返し、カーティスを落ち着かせるため体を強く抱き締める。 怪我に響いてしまうだろうが、それよりも生きている実感を与えたかった。お互いの体温をわけあい、お互いの心臓の音が混じりあって俺とカーティスの体に伝わっていく。 「ーーーーー………」 「うわっ……と、と。カーティス……」 緊張の糸が切れたのか、全体重を俺に預けたままカーティスは気を失ってしまう。 重たい体重に倒れないよう支えるのが手一杯で、このままでは寝かせることができない。 衛生兵として戦場にいる上で、治療のため負傷兵を運ぶ時もあるが、高身長で、しかも気を失ったカーティスを抱えて運ぶのは、かなり骨がおれる。 「先ほどの騒ぎは一体……」 様子を伺うようにして奥からヘイゼルが顔を出す。 丁度よかったと言葉に出した俺は、困惑するヘイゼルを呼び寄せカーティスの肩を両方から支えて移動させる。 寝台で寝かせたカーティスの表情を見ると脂汗を滲ませ、眉間に皺を寄せて苦しそうにしていた。傷に触れないよう運んだつもりだったが、無理をさせてしまったようだ。 協力してもらったヘイゼルに礼をいって、カーティスに向き直る。 「ラハード一等陸尉殿、彼は一体どうされたのですか?」 「私と同じ部隊に配属されていた仲間です。先ほど意識が戻った際、ここを戦場だと勘違いしていたようです」 「それで、あの騒ぎに……」 まるで、初めて出会う負傷兵を見るような態度をするヘイゼル。 俺がここに来る前に、カーティスはここの天幕に運び込まれていただろう。数多くの負傷兵が絶えず運び込まれているからとはいえ、重傷者といっても過言じゃない兵士を放置していたことに憤りを隠せなかった。 ヘイゼルが悪いわけではないが、今は冷静に対応できる気がしない。 「ヘイゼル二等陸尉殿、抗菌作用のある軟膏の予備はありますか?これだけでは到底足りませんので…」 「あ、はい。予備は一つだけですが残っています。すぐに持ってきます」 慌てたように歩いていくヘイゼルの後ろ姿を横目で捉え、足元に転がった軟膏を手に取りながら、顔面の火傷の部位へ塗っていく。 「………う゛……ぅう…………」 衛生兵として幾度となく治療を行っていても、痛みに呻く相手を見ながら怪我の部位に触れるのは怖い。 治療時に痛みが伝わらないように配慮していても、苦しげな表情から此方に相手の感情が伝わってきてしまう。痛い、苦しい、辛い。治療しているとき見るのはそんな表情ばかりだ。 けれど、これが相手を助けるために出来る最善の行動なのだから、やるしかない。 「……う゛………ッシ、モン………」 「なんだ、カーティス」 魘されながらも、縋るように俺や部隊の仲間達の名前を紡ぐカーティス。 意識がないと分かってはいても、名前を呼ばれると起きているのではないかと思ってしまう。何度も何度も、魘されながら名前を呼び続けるカーティスを安心させるように、何度も返事を返した。 「ラハード一等陸尉殿、予備の軟膏です。それと包帯の予備もあったので此方に置いておきます」 「包帯まで……良かったんですか?」 「ええ、構いません。……早く治ると良いですね」 軟膏と包帯を俺に預けたヘイゼルは、そのまま他の負傷兵の元へ。それを見届けた俺も、カーティスの火傷の治療に専念するために意識を戻す。 顔面の火傷に指が触れても大きな動きを見せることはない。 それが意識を失っているせいなのか、痛覚までもが失われている状態にあるのか。今の段階では何とも言えない。
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