【参】voor het land

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【参】voor het land

王国直属地方派遣部隊。 王家からの命令遂行を第一にし、戦線把握のために少数精鋭で動く部隊。王国の要人を守護する騎士団と違い、他国に攻めいるための手段を構築するため前線へも赴く実力派部隊なのだという。 拮抗し、膠着状態となった両国の戦争に痺れを切らした国の権力者達が、いち早く勝利を掴めと命令を下し派遣部隊を投入した。 「まぁ、ここまでは知ってる話だと思うけどね」 王国直属の派遣部隊を戦場に送り込んだ。 他の兵士は皆知っている情報らしいが、俺は聞き覚えがない。恐らくは前線へと向かう道すがらーイーグル大隊の皆がまだ生きていた頃に、情報として伝えられていたことなのだろう。 記憶が抜け落ちた俺からでは、王国から派遣部隊を送り込みどれだけの日数が立ったのか。全く思いだせない。 「ユージッド総指揮官」 「……あぁ、それ僕のこと?」 「私がイーグル大隊と共に前線へ向かったのは、いつの「待って」……何か?」 全く面白くない。 そんな感情が透けて見える表情を向けるエヴァンス。何か癪に触る行動でもしただろうか。 あれから、カリエラが通信を終えるまで天幕の外で待機するつもりでいた俺を、エヴァンスが「彼女が出てくるまで、少し僕と付き合ってくれない?」と半ば強引に連れてこられたのが、彼の秘密基地だという一室だ。 ちなみに、あの時の大尉はエヴァンスに言われ天幕のすぐ外で待機している。どうにも、国との通信の際はエヴァンス以外天幕内に残ってはいけないという話だ。 にも関わらず、なぜ俺をつれてこの一室に来たのか。 カリエラがいる天幕から近く、人目のつきにくい位置にある一室。 殺風景だが、所々に彼の秘密基地たる所以が垣間見える小物が置かれており、プライベートルームに居座っている気がして無性に落ち着かない。 エヴァンスからは楽にしていいよ。と言われているが、俺は立ったままだ。 「僕さ、堅苦しいの苦手なんだよね。君をここに連れてきたのは、王国直属の肩書きを捨てて話したかったからなわけ。あの場所だと他の兵士の目もある。だからここに来たんだけど……何でそんな畏まるのかな、シモン?」 何故、と問われても俺とエヴァンスは初対面だ。 今この状況が珍しいだけで、本来なら同じ場所にいることすら憚られる相手でもあるのだから、緊張するに決まっている。 俺の返答に納得したのか、していないのか。深いため息をついてエヴァンスは立ち上がる。 「イーグル大隊……シュトレン中佐を指揮官とした部隊が前線へ向かったのは、一ヶ月前のことだ。彼らには、前線の膠着を解消させる作戦を遂行させるために僕が指令を出したからよく覚えている。……君もその作戦に参加していた筈だけれど」 歩きながら紡ぐ言葉は、俺が言いかけた問いに対するもの。 エヴァンスの返答は、俺が抱いていた幾つもの疑問を一度に解決させる一言だった。俺の記憶の欠落は、丸一ヶ月の物事全て。そして、王国直属の部隊が送り込まれたのも俺の記憶がない一ヶ月の間。 …たった一ヶ月で、俺の周りの全てが変わってしまったのか。 「……作戦は、どうなったんですか」 せめて俺たちの部隊が偉業を成し遂げたのだという爪痕が残ってさえいれば。ーそんな希望も、エヴァンスが首を振る動作で儚く消えていってしまう。
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