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「淡雪先輩ってまだ俺のことを好きになってくれないんですか?前世ではあんなに愛し合った仲なのに!いいですか。先輩は王様の後宮にいた高貴なお姫様で、俺は将来有望だって言われていたんですけれど、まだまだ下っ端で、そんな身分違いの二人は密かに恋に落ちたんですよ。結末はバッドエンドなんで、あんまり話したくないんですけれど、文字数にしたら10万文字位の山あり谷ありの燃えるような恋を、」
いつの間にか下の名前で呼ぶようになったこの少年のことを淡雪は呆れたように見てこう言った。
「鬼村くん。」
すると今までベラベラ話していた彼は、パッと話すのを止めて目を輝かした。
まるで主人にやっと相手をしてもらえる事になった犬のようだ。
「えへへへ。先輩から苗字にくん付で呼ばれるのも良いものっスね。でも、俺的には騒くんの方が良いです。その方が淡雪先輩からの愛を感じるって言うか。」
「鬼村くん。」
「先輩ったらドライ!でも、そんな所も好き!」
そうやって鬼村にニコニコと話しかけられて、淡雪はなんだかペースが崩されてしまった。
「ねえ、そろそろ美術同好会の部室に来るのに飽きて来た頃じゃない?」
「全然飽きないデス!もう苔が生えるまで先輩と一緒にここで過ごしてもいいぐらいですよ!」
へらへらとそう調子のいい事を言った彼は、でも5分後には「俺は友達と遊びの約束があるんで。また、来まーす!」と言って、あっさり行ってしまった。
淡雪は一人になった部室で「全く、何なの。」そう呟いた。
彼女は彼に1か月前に告白されてからペースを崩されっぱなしだった。
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