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告白
島川淡雪は高校2年生の美術同好会の部長だ。
彼女の通っている夏島高校はあまり美術方面には力を入れておらず、
自分以外の同好会のメンバーも幽霊部員という有様だった。
しかし、淡雪は誰もいない部室で絵を描いている時間を大事にしていた。
彼女は元々他人とワイワイと騒ぐのは苦手なタイプだったし、一人きりで自分の好きな事が出来るなんて幸せだとすら思っていた。
淡雪の描いた絵は時々コンクールで小さな賞を取る事もあった。そんな時は、校内でささやかな噂になった事があったが、皆はあっと言う間に忘れて行った。
初めは慌てていた彼女もそれを繰り返す内に、段々と「そういうものか。」と納得して上手に受け流す事を覚えた。
(私はこのまま静かに好きな事をやりながら、高校生活を終えたいな。目立ったりするのは嫌いだし。)
淡雪はそんな風に考えていた。
しかし、どんな運命の悪戯か、そんな彼女の平凡な望みは叶わなかったのだ。
突然だが、この夏島高校には食堂がある。お値段が安い割に美味しいと利用している生徒は多い。
そして、その平日のお昼時間。沢山の生徒達でごった返す中、彼女は学校の有名人鬼村騒に告白されたのである。
「島川先輩!アンタは100%運命の人です!前世は俺の力不足で悲劇に終わりましたが、今回こそ幸せにします!俺と付き合って下さい!」
そう人前で大きな声で叫ばれた淡雪は、「お断ります。」と言って一刀両断で振った。
しかし、この日から彼女が彼に追い掛け回される日々が始まったのである。
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