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鬼灯の夢
「じっちゃ、ばっちゃ、私、立ったまんま、夢さ見て。きっと、ねえちゃんみてえに妊娠しちまう!」
「夢なら、心配ねえ。この辺じゃ、よぐあんだ」
だって、こんな小娘が、あの味を知っていると思う?
私は処女で、結婚もしたことがないのに。
あの年配の女性は果たして本当に私だったの?
「ずいぶんと、へっぺな夢さ見て。がおったべ。山ん神様のイタズラだ」
お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも生きていて、まだ高校生の私にそう言うと、お菓子を出してくれる。
「千咲、ねえちゃんのややっこ、見てこい。めんこいがら」
和室へ向かうと、お姉ちゃんが横抱きにしてお乳をあげている赤ん坊を凝視する。
「どしたの?千咲。可愛いがってやってね。千咲も面倒を見てみる?将来の練習になるわよ」
無邪気な笑顔で幸せそうにそう言うお姉ちゃんは、何一つ憂いのない声音を次々と弾ませる。
「ほら、祐介、千咲おばちゃんよ。千咲、祐介よ。甥っ子、ってわかる?」
「わかる。…おばちゃんて言うの、やめて」
「そうね。千咲、まだ16だもの。お母さんとお父さんが生きていたら、喜んだろうな」
祐介が、生まれたせいだよ。
と、言いかけて、やめた。
※「えっち」の方言。
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