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鬼灯の夢
怠い身体を起こすと、何度も出された下腹部を荒れた手で撫でて、脚を引き摺って膝を立てる。
風鈴のガラスがけたたましく音を上げ、長い黒髪が煽られ乱れる。
いやな、風だ。
「…、…、千咲!千咲!、いた!探した!」
「祐介?もう戻ったの?」
「え?千咲、眠ってた?昼に俺、一旦山をおりただろ」
「昼?昼には、あなたのを、飲んで…」
「電気通ってるはずだよ!水道もガスも!…千咲、夏休みの間ずっと一緒だよ」
「…祐介、あたしは祐介の、何?」
「千咲は俺の恋人だろ。…生まれて、来られれば、ね」
うわあああん、と、空がぐらぐら揺れながら、真空に喚くようにたどたどしくヒビ割れる。
視界が歪み漂いながら、あたしの世界が壊れていく。
気がつくと、胸下までのみつあみが夜風に揺れていた。
高校の制服を着ている私の目の前には、ちょうど鬼灯が植わっている。
「たくさん、毬を!」
呟くと、私は片っ端から鬼灯の実をもいで、中身を吸い出して種ごと幾つもの口内に放った。
知っていたからだ、昔はコレが堕胎薬として使用されていたことがあると。
両手のひらいっぱいの毬をくしゃりと潰し、私は縁側から祖父母の待つ居間へ向かう。
さっきの夢の話と、祐介のことを聞かなければ。
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