鬼灯の夢

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鬼灯の夢

 ー きっと、祐介が選んだんだ。  必要な人間だけを、生かしたんじゃないの。  それとも、こんなことすら「よくあること」だから、平気なの?  私は、お父さんとお母さんの話をしてはいけないのだ。  祐介が、聞いている。  山の神様が、聞いている。  ここは、そう言うところ。   ー 祐介は、不吉な子どもなのだろうか?  山の神様、まだ私を騙しているの?  祐介は、産まれて来てしまったよ。  私は、あんな大人になるの?  「可愛い、祐介。千咲も、抱いてあげて」  「…うん」  不愛想に返事をすると、怖々と両腕を差し出す。  あたたかくて、やわらかくて、頼りない赤ん坊の肉体と、体温に、思わず顔が綻ぶ。  『好きだよ』  ビクリと身体が強張る。  空耳だとわかっていても気味が悪かった。  もういい、と言って、祐介をお姉ちゃんに返すと、私は夜の闇の中、祖父母の家から漏れる灯りに淡く照らされている縁側へ行く。  靴を履くと、薄暗い、星だけが美しく瞬く空の下で、食べ尽くした鬼灯の花壇へと走る。  ー もっと、食べなくちゃ。  そう、最後に鬼灯の毬を作ったのは、こうしてお姉ちゃんの出産祝いをする為に、祖父母の家に家族で集まる日のことだった。
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