中学一年生の二月某日

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 新月の下駄箱にはチョコが入っているであろう綺麗にラッピングされたハート型の箱がひとつ。リボンに挟まれている手紙は可愛いマスキングテープで封がされ、新月様へと女子特有の丸みを帯びた可愛い宛名が書かれていた。 「本命も本命、大本命じゃん!」  背後でリオがはしゃぐ。その声に遠くから刺すような視線を感じてリオの茶髪頭を引っぱたいた。 「なんだよー!」 「声がでかい! ……まあ、良かったな新月」 「……」 「新月?」  大本命チョコを両手で持ったまま固まっている新月の肩を揺さぶる。その様子を見てリオは大きな目をぱちくりさせた。 「感動のあまり放心してる……」 「嬉しいのはわかるが、とりあえず鞄にしまっとけ」 「え? あ、うん……」  肩がけ鞄のファスナーを閉じず、名残惜しそうにチョコを眺める新月。  さっさと帰るぞと背中を押して校舎から出る。
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