中学一年生の二月某日

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 まるで誰も上げたことがないようだ。  そんなまさか。現にオレは部屋に上がってるし、限られた人しか上げないにしてももっとこう、散らかってたりするもんじゃないか。リオが綺麗好きで、友達が帰ったらすぐ掃除する奴だったとしても、床や壁の傷とかはどうしようもないだろう。  やたら綺麗な部屋に改めて不思議に思ってると、部屋のドアが開かれた。 「お待たせー」  部屋に入ってきたリオはトレーにコーヒー二つと小さなチョコのホールケーキを乗せていた。それを慣れた手つきで座卓に並べる。 「いきなり凄いのが出てきたな」  全体がチョコソースでコーティングされ黒い光沢を放つケーキの上にはホワイトチョコペンで〝ハッピーバレンタイン〟と書かれている。コーヒーの深みのある香りに混じってチョコの甘い香りがする。
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