中学一年生の二月某日

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 部屋のドアを背に向かいに座るリオはどこかそわそわした様子で、瞳を色んな方向へ泳がせている。そして俯いて自分の手元を見つめながら言った。 「あのさ、実は嘘ついてたんだ」 「え?」  急な告白にどんな反応をしていいか悩んで、結局間の抜けた声を漏らしてしまった。  嘘? 一体何で嘘をついたんだ? それよりその嘘をこのタイミングでバラすということになんの意味があるんだろう。  小一からずっと友達だったんだし、余程のことでもなきゃ怒る気も無い。 「あー、なんの嘘か知らねえけど、気づかなかったな。で、どんな嘘だよ」 「う……えっと、実は今まで母さんが作ったって言ってたお菓子あるじゃん?」 「ああ、美味かった」 「そっか……フフッ」  ようやく顔を上げたリオの口角が僅かに上がる。 「あのさ、実は全部、僕が作ったんだよね」 「……あ?」
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