中学一年生の二月某日

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 バレンタイン以外にもたまに母が作った物と言ってクッキーだシフォンケーキだと分けて貰ったことがある。去年今年の話ではなく、もう何年もだ。  全部リオが? そっちの方が嘘っぽい。そう思ったが、あまりにもオレの言った美味しいの一言で喜んだ様子がオレの疑念を否定する。 「マジで?」 「マジで」 「このケーキも?」 「このケーキも。母さんに教わりながらだけど……」 「にしても――」  改めて目の前のケーキを見る。  気泡が無く塗りムラも無いチョココーティング。やや下に伸びてるのを除けばお店の商品ですと言われたってわからないだろう。 「――めちゃくちゃ上手いな」 「その、誰にも言わないで欲しいんだけど、こういうの作るの好きなんだ。教わりながらは大変だけど、一人で作れると作っている間夢中になれるというか、没頭できるというか……」
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