中学一年生の二月某日

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 だからこの如何にも特別な日ですっていう教室の空気がたまらなく嫌だった。最早息を吸うことすら嫌になり、窓際の席をいい事に窓を少しだけ開けて外気を吸った。 「ねえナガト、君はもうチョコ貰った?」  前の席について振り返りざまに声をかけてきた新月コロナにオレは溜め息で返事した。 「優等生サマも企業戦略で生まれただけの習慣なんか気にするのかい?」 「いつになく腐ってるね。で、どうなの」  話を逸らそうとしたのにしつこく聞いてくる新月に朝から嫌気がさしたが、奴のかけている眼鏡の赤いフレームがキラリと光るのを見て何だか逃げられないなと思い嫌々答える。 「わかるだろ。オレが貰えるのなんて精々親からの市販チョコだよ。聞いてくるんだからさぞ優等生サマは沢山貰ったんだろうなあ」 「その呼び方やめろよナガト。ボクみたいな頭でっかちはウケが悪いのさ」 「なんだ、戦利品ゼロ同士、傷の舐め合いしようってか」
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