中学一年生の二月某日

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「まさか、リオの作る菓子の味が一番ホッとするようになるなんてな。食い慣れた美味さだ」 「へへっ、実はお菓子作りが趣味ってちょっと恥ずかしくてさ。女子みたいで」 「んなこたぁねぇよ。パティシエは男の方が多いんだぞ?」 「え? そうなの」  お母さんがパティシエだとあんまそう思わないか。そんな事気にしてたのか。 「そういや、ホワイトデー返したことねぇな……」 「気にしなくていいよそんなの」 「いいやダメだ。お前が作ったって知ったからには返さねぇと。だからさ――」  これがお返しになるかわかんねぇ。  けど、オレはリオと一緒にいたい。 「――今度お菓子の作り方、教えてくれ」 「あ、あ……!」  リオは今日一番の笑顔で体を震わせるほど喜び、琥珀色の瞳を輝かせた。まるで顔の周りに花が咲いているのが見えそうだ。 「うん! 一緒に作ろう! 沢山作るぞー!」
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