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「これは、いかがなものか。」
そう言ってため息をついた上司の整った顔を見つめて、私は考える。
別にいいんじゃないでしょうか?
でも言えないので黙っていると、上司が
「別にいいよね?」
と訊いてきたので、引き続き無言で上司を見つめた。
「五味さん、そうやって同意に誘導するのずるいですよ。」
私の隣で、同様に口を閉ざしていた前島さんが、厚い胸板をさらに張って、堂々と上司を揶揄する。
「じゃ直球で。味方して。」
五味部長が拝むように両手を合わせて私たちに頭を下げる。
「五味さん、部長なんだからそういうことしないでください。」
「無理だよ。不破さんとか、直川さんとか、怖いもん。」
「おっさんが部下を怖がるな。」
「おっさん関係ないだろ!おっさんでも、怖いもんは怖いんだよ!」
「じゃあ、沓村さんに席は自由でって言えばいいじゃないですか。」
「ばかやろう!沓村さんも怖えーんだよ!」
上司が同僚を怒鳴りつけるところを初めて目にし、私は眉間に皺を寄せた。それに気が付いた五味部長がハッとして私に謝った。
「大きい声出してごめんね、櫻井さん。」
「いいえ、部長。声の大きさではなく、怒鳴っている内容がかっこわるすぎて眉間に皺を寄せたんです。私こそ申し訳ありません。」
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