File:1 斎藤しずく

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File:1 斎藤しずく

刑事さん……私を逮捕してください。 私が幸を殺してしまったんです。 えっ?動機ですか…… えっ、えっ……とぉ あの、あれです! ついカッとなってしまって 衝動的に目の前に包丁が見えたので すかさず手に取って殺してしまいました。 ごめんなさい…… いえ、幸と喧嘩をすることは殆ど無くて むしろお姉ちゃんみたいな 存在です。 兄妹が居ない私にとっては 唯一甘えられる人なんです。 いつも私を気にかけてくれました 私は元々人付き合いが得意ではなくて 学校に行くと人の何倍も エネルギーを使って 家に着く頃にはぐったり寸前なんですよね。 そんな私を幸は 家に帰ると 真っ先に玄関に走ってきて 「おかえり!」 ってはち切れんばかりの笑顔で 出迎えてくれるんです。 例えるなら天真爛漫なポメラニアンのような 小動物感もあるんですけど 大仏様のような寛容さも 合わせ持つもう…… 男ならメロメロになること間違いなしの 人格者なんです! どんなに疲れてても 幸のくしゃっと笑う顔を見ると 嘘のように元気になるんです! 私の癒しでした!!! えっ?落ち着いてますよ! いたって冷静です! だってもう幸に逢えないんですから…… あぁ、通報したのは 隆介ですね。 隆介は包丁を持った私を見て 何してんだ、バカ! って頑固オヤジのような 怒声を向けてきたんです。 まぁそれぐらい 幸に対して 思い入れはあったんだろうなと 察しはしますけどね 何だったら私に殴りかかってきそうでしたよ まぁすかさず包丁を向けて 威嚇したのが功をせいして 怯んでましたけど。 って刑事さん! お願いです! 私が幸を殺したんです この右手で! だから逮捕するなら私を 私にしてください!
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