File:5 秋原まひろ

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File:5 秋原まひろ

あの……私のこと疑っているんでしょうか? それなら私違いますよ…… 実際、あの夜の時は 家に居ましたし、あっ皆そっか。 でも私は人なんか殺せません。 足元にたかってきた アリさんですら 跳ね除けることが出来ずに ただ傍観するように見つめることしか 出来ませんもん…… そんな人がシェアハウスの住人で まとめ役でもあった 加藤さんを殺せるとお思いですか? こんなこと言ったら 故人に失礼極まりないかもしれませんが 私と加藤さんは10歳ほど年が違って あんまり意見も合わなかったので 親しくはなかったですよ…… 実際、シェアハウスの住人が誕生日に なると毎回パーティーみたいなものを 開いて盛大に盛り上がるものが あるんです。 やがて私の誕生日になりました。 すると加藤さんは聞いてきたんです。 誕生日のケーキは何がいいって 私はチョコが好きなので チョコレートケーキが欲しいですと 伝えました。 すると加藤さんは眉を歪ませて ショートケーキにしようよと 返してきました。 私はなんでって疑問形にして その回答を返しましたよ。 だってバースデーガールなのに 食べたいもの聞かれて通らないことなんて 理不尽なことありますか? そしたらなんて言ったと思いますか? チョコケーキは私が好きじゃないからって 生まれて初めて耳を疑いましたよ。 じゃあ最初から聴いて来ないでくださいと いう言葉が喉からでかかりましたが 必死に呑み込んで消化しました。 それもそうだね、定番のショートケーキにしよう。 加藤さんに合わせてその場を乗り越えました。 その言葉を聴くと加藤さんは にんまりとまぁ表現は宜しくないですけど 小悪魔みたいな笑い方を見せつけられました。 シェアハウスは共同生活なので 協調性が何よりも大事なんです。 一瞬でも反抗して加藤さんと 揉めた暁にはシェアハウス内は 悪い空気が流れてストレスが 重くのしかかるでしょう。 だから私は自分を捨てて 良い人を演じていたのです。 10歳も年上なのになんで こんなことも分からないんだって 冷ややかな目で見てましたよずっと。 だから正直、加藤さんが居なくなって スッキリしている部分もあります。 でもだからといって 私は殺ってませんよ…… まぁでもそれぐらい 加藤さんは自己中だった事は 証言としてお伝えします。 誰にも好かれないでしょうね。 あの性格では。
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