2.2つの顔

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 コンラッドが世間知らずのお坊ちゃまであることは既に知れ渡っている。そんな相手に剣で負けていることがよほど気に入らないのだろう、クリスは独り言のように嫌味を吐き捨てた。その言葉は聞き流されなかった。コンラッドではなく、オーウェンにだ。 「コンラッドは何も出来ない訳ではない。君たちとは分野が違うだけだ。訂正して貰おう」 「い、いいよオーウェン大丈夫だから……!」  クリスを強く睨みつけるオーウェンをコンラッドが宥める。一触即発の空気が流れかけたが、すぐに教官が口を挟んだ。 「クリス! しょうもない喧嘩を売るな。オーウェンもいちいち買うんじゃない」 「……すみません」 「……申し訳ございません」  目を逸らし、腹を押さえながら外周に戻っていくクリス。教官は呆れてため息を吐き、手を叩いて全員に声をかける。今のが今日最後の練習試合だった。 「本日は以上。クリスは念のため医務室で診て貰え。解散」 「ありがとうございました!」
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