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私は話し始める。
「あのね、声が聞こえたとき、私の前には山下くんがいたの」
「あら、じゃあ決まりじゃない」
なーんだ、という風にミホは言うが、
「でも、山下くん後ろを向いてたんだよ。告白するときに背を向けたまま言うかなあ」
私がそう疑問を口にすると、
「うーん」
と黙り込む。
「あとはね、私の右横を椎名くんが歩いてた」
「きゃっ。椎名くん? いいじゃん、カナ!」
「まだわかんないってば。ミホの好みを出さないでよ」
「こほん……失礼。ほかには?」
私は続ける。
「声が聞こえた後、周りを見回したら、二階の窓が開いてて、そこから陣内くんが顔を出してた」
「陣内くんかー! わるくないね」
私はミホをにらむ。
「あ、ごめん。……姿を見たのはそれだけ?」
こくり、とうなずく。
「つまり、候補は三人か。こっちに背を向けてた山下くん、となりを歩いていた椎名くん、二階にいた陣内くん……」
ミホは人差し指を顎に当てて、考え込む。
「なるほど」
「わかった?」
私が期待を込めて尋ねると、ミホは笑顔で言った。
「ぜーんぜん」
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