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「おはよ」
私は声をかける。啓太の肩がびくっと震えるのがわかる。
「あはは、びっくりしてる」
啓太はそのまま足早に先を歩いていく。あっという間に背中が小さくなる。
あれ、怒ってんのかな。啓太が挨拶を返さないのは珍しい。あとで謝っとこう。
私はそう考えながら、足を進める。
「ああ、そうそうこの曲だっけ」
私はイヤホンをタッチして音量を上げる。丁度あのとき流れていた曲だ。ほんとにあれ、誰だったんだろう……。
悩みながらも、曲に耳を傾ける。それにしても、けっこういい曲なんだよな、これ。
ひとしきり曲を鑑賞する。曲が終わり、私は空を見上げる。
「はあ、いい天気……」
突然、聞こえた。はっきりと、この間よりも大きな声で。
「カナ。俺、お前のことが好きだ」
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