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私は前方へ目をやる。
遠くに、いそいそと先を急ぐ同級生の男の子の姿。
私は曲をもう一度再生する。
「もう一度だけ、確認しよう」
そう、もう一度、もう一度だけ聞いて、それから……いや。
「ていうか、何度も聞いちゃおう」
私はいじわるに微笑む。
「ファイルなんかに残すのが悪いんだから」
それから速度を上げて、ずいぶん前を早足で歩く啓太を追いかける。
頬がちょっとだけ熱い。
空は見事に晴れていた。
了
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