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「先って?」 「寝返りをしたのもつかまり立ちをしたのもこの世界を歩き始めたのも。 だから翔子に先にベビーシューズを履かせることになった。 キラキラとした目で結子よりもずっと早くこの世界を翔け始めたその姿を見て、翔子にも素質があるとすぐに分かった。」 「そっか・・・。」 「結子と翔子の2人で一緒にこの世界に、永家の“家”に生まれ落ちてくれた。 だから翔子はあそこまで強くて逞しい女の子になれた。 永家の“家”から結子を守る為だけに強くなることで、永家の“家”の上に立てるくらい強くて逞しい女の子に。 まさか翔子自身がそこまでいけるとは思っていなかったけど、結子が結んでくれたから。」 「私が?」 「増田君と、そして一夜君を。」 「それは私が結んだんじゃないよ。」 私が首を横に振るとお母さんはニヤッと笑った。 「お父さんが“ゆきのうえ商店街”の麒麟にツテを頼んだの。 信之の次の婚約者がなかなか決まらなくて。 そして永家不動産の面接に現れたのが一夜君だった。 永家不動産の社長が最終面談で一目見ただけで“ソレ”だと分かったくらいの男の子。」 「永家不動産の社長、翔子のことをよく理解してくれてるからね。 翔子と一緒に翔てくれる人だって分かってくれたんだ。」 「増田君が結子のことを好きになってくれていたから、一夜君も翔子もあそこまで力をつけられた。 お父さんもお母さんも的場の社長がお姉ちゃんをすぐに妊娠させたせいでそこまで黒くはなれてないからね、増田君がいなければ難しかった。」 お母さんがそう言ってからゆっくりと立ち上がり、私の背中を少しだけ押した。 「そろそろ時間、1番好きな服を着ておいで。」
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