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“私今年で30になるんだけど!!” 先輩のその言葉が的場製菓の1階に響き渡る。 でも何故かそこだけフランス語で、みんな不思議そうな顔をするだけで終わった。 それに私は両手で口元を抑えながら笑い、先輩に聞く。 「先輩って信之君と同じ高校でしたっけ? 信之君は高校の後輩なんですよね? 私の妹も信之君と同じ高校に通ってたんです。」 お父さんもお母さんも自分達のような関係になるのを期待して翔子と信之君を同じ学校に通わせ続けていた。 でも翔子は真面目過ぎる信之君に何も興味はなく、むしろ真面目過ぎる所が私の相手としては信用出来ると思っていた。 でも、そんな信之君は結果的に私の元から消えてしまった。 永家財閥の本家の長女を置き去りにして、消えてしまった。 楽しく生きたくなったらしい。 この先輩と、楽しく生きたくなったらしい。 「私は近くの女子高に通ってたのよね。 それで英語部に入ってたの。 信之が通ってた高校の英語部と週に1度交流してたのよね。 そこの部長がめちゃくちゃタイプで即入部したけど、非の打ち所がない完璧な副部長の女が彼女だったのよ!! それをイライラしながらフランス語で愚痴りまくってたら、信之が部活見学の時にいたの。 穏やかで柔軟そうでDVなんてしなさそうで、私のワガママを全部聞いてくれそうな信之が。 それがこんな精神的なDVをされるなんて思いもしなかったわよ!!」 それからは私の話よりも先輩と信之君の話に花が咲いた。 それは翔子のような原色が似合う先輩から出てくる話とは思えないくらい、淡い淡いピンク色の話だった。 まるで、桜の花のような・・・。
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