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「嬉しい、働いてから初めて一緒に帰るね!」
「この将来の社長様がね、従妹とまた変な噂になるのを嫌がったからね。」
「あ、俺は一緒に帰らないからな?
新婚夫婦を邪魔する程コミュ障じゃねーし。」
別にコミュ障ではないのに妙子ちゃんから言われているからか、和がまたそんなことを言っている。
それから和が先輩の方を見て、言った。
「彼氏、日本に戻る予定は今のところないんですよね?
いつ頃向こうに行くんですか?」
先輩がいなくなる前に新しい人を募集しなければいけないのでそう聞いたのだとは思うけど、私は焦りながら口を開いた。
でも、私よりも先に先輩が口を開き・・・
「信之、日本に戻る予定ないの!?
そんなの聞いてないんだけど!!」
まだ付き合って日の浅い2人。
信之君はそんな大切なことを先輩に伝えていなかったらしい。
“早く日本に戻ってこないかな”と嬉しそうにしていた先輩の姿を数分前に見たばかりなのに、今はこんなにも怒っていて・・・。
和も“しまった”みたいな顔をしている。
「“日本に戻ってきて”ってワガママを言えば戻ってくるんじゃない?」
増田君が優しい顔で先輩のことを見てそう言った。
「この前は“先輩”が向こうに行ったんでしょ?
次は言ってみなよ、“早く日本に帰って来て”って。
そしたら言葉の通り飛んで帰って来ると思うよ?」
増田君の優しい口調で先輩の怒りが鎮まり、今度は何やら考え出した先輩。
それから先輩は小さく笑い、美人な顔をもっと魅力的にして笑った。
「私は何ヵ国語も喋ることが出来るのよね。
それも永家財閥の本家の長女よりも上手く。」
「そうですね。」
思わず返事をしてしまうと、先輩は私を優しい顔で見詰めてきた。
「私、大人しく待ってるなんてことが出来ない女なの。
だから私が向こうに行ってくる。
私がいなくなった後、ここを任せてもいい?
的場製菓って信之が大好きなお菓子の会社なのよね。
その会社の“顔”、永家さんに任せてもいい?」
そう言われ・・・
そう言ってくれて・・・
私はしっかりと頷いた。
満足そうに先輩が笑い返してくれた後、先輩は増田君を睨み付けた。
「信之がいる所を知ってるってこと?」
「はい、知ってます。
“信之君”とは少し友達で。」
「増田さんの名前なんて聞いたこともないけどね・・・。」
「はい、なので少しだけ。
後で住所をお知らせしますね。
思う存分ワガママを言ってあげてください、泣いて喜ぶんじゃないですか?」
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