小田原わくわくランド

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九時半の開園に合わせて飼育室から運動場への移動となるが、事前にサル達が行き来する通路に異物が落ちていないかチェックする。 来園者が良かれと思って投げ入れた物でも、動物達には禁忌であったりするからだ。 サル達が運動場に出ている間、彼らの寝室の清掃、枝葉の補充、飼育室の掃除などを行う。 昼休みは、正午から一時間与えられているとは言っても、休みの飼育員のヘルプで、他の棟に駆けつけたりする事もあり、何らかの理由で潰れることも多々ある。 午後はサル達の寝室の環境を整えたり、給餌の準備をしたりする。 他に、手の空いた時間などを利用して、各飼育員は受け持ちの動物の飼育日誌を書く必要があるのだが、文章の構成力が乏しい絵美にとっては、数年たった今でも、20分以上の時間がかかっていた。 閉園後はサル達を運動場から寝室へ移動させ、施錠してから部屋を出る。 ここでは終業時間になったからと言って、職員が皆、我先にタイムカードを押しに事務室へ押し寄せるような事は無い。 皆、早く帰りたいという気持ちよりも、担当の動物達の為ならば、時間など惜しくないと考えているからだ。 さらに風邪や腹痛などで、おいそれと休む訳にはいかない仕事なので、各自、健康管理には殊の外、気を遣っており、普通であれば、飲み会などで酔いつぶれるまでとことん飲むといったような事も、ここで働く者達にとっては論外として位置づけられていた。 時に職員らは、そういう生活ならさぞ、お金も貯まるのでは?とした邪推を受ける事もあったが、ここで働く女性達の多くはメイク用品やアクセサリーとは無縁に生きており、そういう意味では無きにしも非ずと言った所だった。 タイムカードを押し、いつものように原付で帰路に就く。 職場から十数分の距離にあるコーポは、部屋にクローゼットが付いているのが決め手となり、契約した。 帰宅後は、体に染みついた匂いを消す為、必ずシャワーを浴びる。同時に気持ちもリフレッシュされ、オンとオフの切り替えには欠かせなかった。
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