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「せんぱい忘れてませんか? 俺元から授業サボる様な不良ですよ?」
「堂々と言うことじゃないと思うけど・・・もちろん覚えているよ」
入学式の日、新三年生と喧嘩していた千早くんを止めたの、俺だからね。
「なら良かったです」
曖昧な笑みを浮かべる俺に、千早くんは満足そうに微笑んだ。
「執行役員、来るのが遅いぞ」
現場の空き教室に到着すると、肩に白い鳥を乗せた、同期の歩くんが待っていた。
肩に乗る鳥は、俺が飼育している3匹の内の1匹、オオバタンのムーだ。偵察係として、活用している。
「すみません、遅れました。戻って来い」
「クアー!」
「お疲れ様」
ムーの首に掛けてあるカメラをポケットにしまって、肩に乗せる。
今回は被害に遭いそうな生徒から事前に許可を貰って、ムー通して風紀委員がリアルタイムで監視を行っていた。
直接被害に遭う前に助けられたとは思うけど、念の為歩くんに尋ねる。
「歩くん、被害の方は大丈夫ですか?」
「さぁな。ことが始まる前に強姦魔は追い払えたが、信頼していた部活の先輩が主犯だったらしく、ずっとあの調子だ」
「・・・・・・」
歩くんが顎で指した方に視線を向けると、茶髪の生徒が壁に寄りかかって蹲っていた。
「なるほど。それは災難でしたね」
「他人行儀だな」
「人聞きの悪い」
ギロリと睨まれて、思わず苦笑いを浮かべる。
仲の良かった友達や先輩が、なんてことは、仕事柄よく見てきた。
赤の他人が何か言った所で、余計に頭を混乱させてしまうだけだ。
今は気持ちを整理する為にも、そっとしておいてあげた方が良いだろう。
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