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……警務部の生徒さんが運転する軽装甲機動車が近づく気配がする。
「あ、お父様!」
わたしは純粋な人間ではない、人間と狐の遺伝子が混じった狐ハーフだ。その野生で装甲車のエンジン音もしないうちからお父様の来訪が気配でわかる。
やっと軽装甲機動車のエンジン音が聞こえる。
と、かなり大きいエンジン音が部室の前に停まり、わたしは車輌から外に出たお父様に飛びついて抱きしめた。
「おいおい、治子、学校とプライベートをきちんと分けないと……」
だってお父様かわいいのだもん、とわたし。
嘘じゃない。
ある機密を探る任務に出たわたしの母は、まだ物心つかないうちに行方不明になった、母も父も国際的な特務機関に所属して任務を遂行している。
お母様が人間、お父様が狐。
ますむらひろしの描くすてきな漫画のように、お父様はいつも後ろ二本足で立っている──猫ではなくて狐だけど。それがぽてぽて歩こうものなら、自分のお父様であっても萌えてしまう。椿銃砲店の跡継ぎ、ときどきアンティセプティック・チームに来ては全員の銃の専門的メンテナンスをしてくれる猫のアリョーシャちゃんもますむらさん系で可愛らしい。
小佐野部長も碧ちゃんも、外へ出てきた。
「これなら金賞間違いなしでしょう!」
とお父様は軽装甲機動車のドアを開けて後部シートにどかっとおいた南瓜をみなに披露した。
うわ……と声が漏れる……。
お父様はある国の名前をあげ、そこで採れた南瓜だと説明してくれる。──治子と仲のいい葉桐薫さんが以前、悪政をしく大統領を暗殺しただろう。そこでは南瓜がよく採れるんだ──なんとか買えたよ、このおばけ南瓜、とお父様。
ざっと左右、八十センチはありそうで凸凹がとっても激しい。
「これならとにかくインパクトは狙えるわね」
と、小佐野部長は莞爾と微笑む。
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