新米看護師と毒舌患者

3/13
前へ
/13ページ
次へ
「あなたねえ、 病室で何騒いでるの、看護師のすることじゃないでしょうが」 ナースステーションに入った途端、師長の様子は豹変した。アレだ、般若にそっくりだ! 「だ、だって。203号室のヤマダタロウさんが、私につっかかってくるから」 「ったく、日頃から言ってるでしょうが、面倒な人はうまく躱してやり過ごしなさいって。あなた、担当患者の一人一人に立ち入りすぎ」 「うう…そんなこと言って。あの人何でもつっかかってきて面倒だからって、私に押し付けたの、師長じゃないですか」 「…え?ちょっとナニイッテルカワカラナイ」 「ひどい!急にカタコトになってる!」 「まあ、とにかく。 ヤマダタロウさんのことは、いい感じでやり過ごして。 ...彼も辛いのよ。事故で運ばれてきて、気づいたときには解離性健忘(=記憶喪失)で、自分の名前まで忘れちゃってるっていうんだから。 なるべく優しくしてあげてね。 …あ、それから、くれぐれも逃げられないように見張っといて。 入院費踏み倒されたら困るから」 「………」 自分が言いたいことだけいうと、師長は“これだからZ世代は”などとホザきながら、とっとと向こうへ行ってしまった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加