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「笹本さん、ずっと前からあなたが好きです……!」
放課後の二人きりの教室。ついに言ってしまった。俺はついに告白した。クラスの人気者、笹本舞香に。彼女は、俺の言葉に驚いているように見える。
ややあって、彼女は閉ざしていた口を開く。
「実は私にも、柳くんに言いたいことがあるの」
おお、これはひょっとして成功したのではないだろうか? やったぞ! ハッピーエンドはもうすぐそこだ! 今日は家に帰ってお祝いだ!
「あのね。私、あなたがずっと前から……」
ずっと前から……。
「嫌いだったの」
えっ。待ってほしい。ここまで来てまさかの結末がそれなのか? 俺は頭の中でこの言葉を何度も再生する。だけど、この一言が持っているインパクトのせいで思考が何度も停止してしまう。
「あなたのその妙に良い顔とか、周りに向ける優しさとか、何でか私とだけ目が合わないとか! 柳くんが持っている全てが眩しくて嫌い!」
何だろう。笹本さんが俺のことを嫌いな理由がうまく理解できない。理解できなくて余計にどうしたらいいのかわからなくなる。俺は、今、目の前の彼女に何を言えばいいのだろう。
彼女の告白は尚も続く。
「だから、私はあなたと一緒にいたいけどいたくない! 嫌いなのに理解したい! 好き!! 推したい!!」
うん? 好きなの? 何なの? もうわからない……。彼女の予想外の反応に俺は何も言葉が出なくなってしまった。
やがて、彼女は何か気づいたようで、顔がとても赤くなる。
「ああ、ああ、何言ってんだ私!」
そう言ってから彼女は教室を飛び出してしまった。
遠くの方から「私のバカヤロー!」という彼女の叫び声が聞こえたような気がする。
嵐のような出来事が終わり、俺はその場に倒れ込む。どうやら、ハッピーエンドは程遠いようだった。
(完)
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