うたえない

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うたえない

痛みを含む喉を押さえた。うえ、と呻きが漏れた。 「もう歌えないだなんて…」 私は俯く。 喉が壊れた。最も恐れていた出来事が起こってしまった、と私はひどく後悔した。 合唱界の新進気鋭、雨沢音(あまざわおと)。 高音も綺麗に響き、低音は滑らかに滑る。まさに神の声。そう称されてきた彼女のうたは、今消えようとしている。
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