うたえない

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

うたえない

痛みを含む喉を押さえた。うえ、と呻きが漏れた。 「もう歌えないだなんて…」 私は俯く。 喉が壊れた。最も恐れていた出来事が起こってしまった、と私はひどく後悔した。 合唱界の新進気鋭、雨沢音(あまざわおと)。 高音も綺麗に響き、低音は滑らかに滑る。まさに神の声。そう称されてきた彼女のうたは、今消えようとしている。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!