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Kanonになりきってみて、もう一つわかったことがある。
それは動画は幾らでも作れるということ。あの動画は前半部分は本物だが、後半の――三田鹿乃子の霊の語りは――恐らく偽物だ。
誰の仕業なのか?
ううん、犯人を暴く必要はない。
暴いたところで私に裁く権利は無いから。
だけど。
「あの動画を作ったの、舞だよね?」
翌日、言わずにはいられなかった。
私はそういう性格なのだ、昔から。
「私にそんな技術はありませんよー」
「とぼけないで。私が動画の撮影者だと知って、わざと見せたんだよね?」
沈黙が答えだった。
最近、私はあちこちの動画サイトやSNSを巡回するようになった。だが舞の言うような流行はおろか、動画の一件も、検索には引っ掛からなかったのだ。
つまり動画は存在しなかった。
舞の手元以外には、どこにも。
「……バレましたか。三田鹿乃子と私は、従姉妹なんです。優しいお姉ちゃんでした。それで」
「動機も、わかってる。私に罪を忘れさせないため。……あの日、先回りしてマンションの三階で三田鹿乃子に似た格好をして待っていたよね。帰宅した後はアパートに来て、私を怖がらせた。ずっと同じ会社で働いていたから合鍵を作る機会なんて幾らでもあったはず」
舞は黙りこくったまま、私を見上げる。
そこまで推理されたのが信じられない――という表情だ。
「あれから来なかったのは、私がKanonを作って反省していると思ったから?」
俯いてしまった舞から、答えは返って来なかった。
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