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帰宅したアパートの電気を点け、冷蔵庫を開けた。舞と朝まで飲み明かすつもりだったので、ビールの在庫を切らしている。仕方なくミネラルウォーターをコップに注いだ。
私が高校生の頃は今程動画SNSが流行っておらず、動画は拡散されなかったのが幸いだ。しかし死の瞬間を撮影してしまった事実にどうしても耐えられなくて、数名の友達に無理矢理送りつけてしまった。その内の誰かがネットの海に流したに違いない。
あの事件からは、ずっと逃げ続けて来た。県外の大学に進学し、成人式にも出席せず、遠方で就職。高校時代の友人とは一切の連絡を絶っている。
もし、まだ繋がれるとしたら――
「――もしもし、ゆっぴー? 私、朋菜」
「えっ。ともなん?」
電話の相手は高校時代の親友、美有子。話すのは卒業式以来だ。
「久しぶりー。今、電話平気?」
「あっ、うん……」
いきなり動画の話を切り出す訳にもいかず、まずは他愛のない雑談を数分間。
「それでさ、三田鹿乃子って覚えてる?」
それまで朗らかに笑っていた美有子の声がぴたりと止まったが、私は続けた。
「あの動画、今、高校生の間で拡散されてるんだって」
「だから電話してきたの?」
美有子は怒っている。
「あ、うん、ウケるよね」
「ウケるって、何? ともなんって、いつもそう。いつも自分の問題に他人を巻き込んで、卑怯だよね。二度と連絡して来んな!」
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