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動画を公開して三ヶ月が経った頃、涼が言った。
「素朴な疑問だけどさ。突発的に飛び降りちゃう程の告白の返事って、何だったんだろーな」と。
その言葉に七年前の記憶が蘇る。
教室には、金藤宏汰と私の二人だけ。
彼は振り絞るように打ち明けた。
「小柄な可愛い系の子が好きなんだよね、って言っただけなんだ……」
三田鹿乃子の容姿を揶揄する意味合いではなく、付き合えない理由を素直に伝えたかったのだ、と。
悪意は無かった。だが素直さは、時に猛毒だ。
三田鹿乃子はいつも「私はブスだ」と言って前髪を伸ばして顔を隠す、そういう子だった。
「現代の技術なら、誰だって加工や合成で可愛くなれるんだよね。生まれ持った容姿なんて気にならない時代になっていくのに……」
「そりゃ、どうかなー」と涼は言う。
「美しいものばかりが世の中に溢れ返るってことは、人々はどんどん目が肥えて、美醜の基準が厳しくなるんじゃない?」
「嫌な話……」
「ま、朋菜の言うような利点もあるけど」
私は、鏡に映った自分の全身を見つめた。ジャストサイズのウェアは私の体の線を浮き立たせて、物足りない脚の長さや、ぽっこりと出た腹の肉、太すぎる二の腕を突きつける。
一方、Kanonは憧れたスレンダーな体型をしている。モデルなのだから当然だが、三田鹿乃子似の。
三田鹿乃子は、卑屈になる程醜くはなかった。しかし彼女が抱いていたコンプレックスの重さを、私は見誤ったのだ。それは青春のおもちゃにしていいものではなかった。クラスメイトとして、友達として、そっと尊重してやらなくてはならなかったのに。
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