友人は宇宙人

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 透は昴輝の様に、特に明確な理由があって今の会社に就いた訳では無かった。もともと実家には大学へ行く経済力もなく、高卒で今の会社に就職した。  一人で平穏な生活が送れて、それなりに楽しめればそれでいいと思っていた。……いや、思おうとしていたのかもしれない。  自分より後から入ってきて、好きな物に関わって、活き活きした姿で働いて出世していく友人を見て、自信がなくなっていった。それと、同時に友人が羨ましいと思った。  主任と平社員という関係になっても、変わらなく接してくる友人と飲みに言った時に、そんな事をぽろりと酔いに任せて漏らした記憶がある。それを彼は憶えていたのだ。 「……いきなり宇宙を旅するのはハードルが高いというのなら、まずは地球一周からでもいい。飽きたとは言ったが、お前と旅をする事によって俺も新たな視点が見えるかもしれない。」  そう話すと昴輝が突然、ぴいっと指笛を吹き出した。すると、パアアアッと上空が明るくなったのを感じた。透が見上げると、そこには直径何百メートルもある大きな円盤が現れた。  UFOだ。UFOっていうのは、犬のように指笛一つで現れるのか。驚いて目を(みは)りながらも、透はどこかで冷静に考えていた。 「……少し、この辺をドライブしないか? 」 「……え? 」  この状態のままだと、さすがにかなり目立つ。それはまずい。透の返事を待たずして、強引に彼の右手を掴むと、円盤の中央の真下へと連れて行く。すると、その中央から光が上から下へ筒状に降り注ぎ、二人は宙に浮き上がって円盤に吸い込まれていった。  
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