友人は宇宙人

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「……綺麗だな。」  気がつくと、いつの間にか昴輝が隣に立っていた。 「……運転しなくていいの? 」 「あぁ、ステルス自動運転に切り替えたからな。」 「……ステルス? 」 「周りから見えないようにするんだ。発見されて、大騒ぎされると何かと面倒だからな。」 「……あははっ!そんな事もできんのかよ! 」  つくづく自分の思い描いている宇宙人やUFOと違う箇所が多くて、可笑しくて透は笑う。  『自分は宇宙人だ』と友人が告げてから、新たな発見ばかりだ。 「好きな人間には、そうやって笑っていてほしい。」  昴輝の突然の言葉に、透の動きがピタリと止まる。 「え? す、すき? ……ええっ?? 」  夜景をバックに愛の告白というようなシチュエーションに、透は混乱する。  『一緒に旅をしよう』という言葉は、地球上や宇宙のどこかでプロポーズの意として使われているのではないのだろうか。何しろ常識破りのこの宇宙人の事だ。ありえない話ではなないかもしれない。 「……あぁ、悪い。好きっていうのは友人としてだ。」 「……あ、あぁ!! そ、そうだよなぁー! よ、良かった〜」 「……まぁ、互いがそういう関係性を望んだ未来がもしも訪れたら、その時はそれでもいいと、俺は思っている。」  『友人として好き』と聞いて安心したのも束の間、昴輝の言葉に透は耳を疑う。 「えっ!? そ、そういう関係って? 」 「恋愛パートナーという意味だ。」 「い、いや、おかしいだろ! 人間と宇……あ、いや、その前に男同士だし、な! 」  『人間と宇宙人が』という言葉は、昴輝を傷つけてしまうかもしれないと思い、言葉を濁して透は言う。 「……俺は、もともとオスでもメスでもないぞ。」 「……は、はぁあ!? 」  驚きのあまり透は、どこからどう見てもイケメンな姿を上から下まで凝視するが、それはこの地球(ほし)の仮の姿でしかないのだ。 「この自由自在に形を作り変える肉体で、お前の好む女性に形を変えることもできる。子を成したいのであれば、繁殖行為と妊娠期間中であれば、中身もそれに応じた形を成す事が出来る。」 「……へ、へぇ……」 「……つまり、俺とお前で子孫を残す事は可能だ。」   「……ええっ!? あの……えっ……」 「あくまで可能性の話だ。本気で考えるな。」 「……あっ、そっか。……うん。」  自分が我が子と手を繋ぎ、その反対の手を昴輝が繋いで3人並んで歩く想像までしまったが、昴輝の冷静な言葉にハッと我に返る。それと同時に変な妄想までしてしまった自分が恥ずかしくなって、顔を赤らめた。 「……お前は、本当に面白い。」 「お前ほどじゃねぇわ。」  『こんな変わった設定だらけの宇宙人に敵うはずがない。』と、ぶすくれた様子で言う透に、昴輝はククッと笑う。 「……いや、本当に面白い。」  素直に反応を態度に表すさまは、見ていて楽しい。そういう部分は変わらないでいてほしい。小さな悩みに浸食されてほしくない。 「改めて言おう。」  友人には笑顔でいてほしい。 「俺と一緒に旅をしないか? 」
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