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*スナック*Sさん*
私がスナックで働いていたのは18歳から19歳になる少し前の約半年ほどのこと。
まだ若くて美人なママと、数人のお姉さんたち。
それから、専門学校が一緒だった友達2人。
私を入れて、18歳の女の子は3人いました。
まだ風営法が見直される前で、ゆっるゆるだったので、店はお客さんがいれば朝までやっていたし、18歳でもお酒は飲んでね!と言った感じ。
って言うか、今だってスナックもキャバクラも18、19のコは飲んでます。
飲むコはね。
飲めないコは無理して飲んではいないと思う。
嘘です、ちゃんと守っている店が大多数だと思いますはい。
ところでなのだが。
Sさんと言うお客さんがいたのだが、とても口下手で、女の子と話したいけれど上手く喋れない、みたいな感じの常連さんの男性で、40歳前くらい。
女の子と話すのは緊張しちゃうけど、同じ空間にいたいんだなあと言うのがわかる。
ママも商売なので、Sさんには次から次に新しいコをつけて、つくコがかわるたびに違う飲み物をオーダーさせる。
会話が弾まないので、場が持たなくなるとみんな「かんぱーい!」と一気飲みなんかして、Sさんが興味があろうとなかろうと自分の話せる話を爆弾トーク、「カラオケしていいですかー?!」歌う、歌う、歌う。
仕方がない、それしか沈黙から逃れる手はないのだから。
しかし、Sさんはいつもちゃんと「お返し」だけは欲しがることを忘れない。
勤務時間が終わり上がるコがいたりすると、自分もお会計をしようとする。
帰り道をつけられたり、「タクシーで送る」と声をかけられ、家までついて来られたコがいるとのことだった。
だからママはいつも、Sさんの行動には目を光らせていた。
出禁に出来なかったのは、まだ実害がなかったのと、常連さんであり、金額もそこそこ使ってくれるお客さんだったから、であろう。
しかし、何も起こらなかったのであれば、私がここに書いているわけがない。
Sさんが狙っていたのは、私たち18歳の新人の中で、男性に免疫のなさそうなKちゃん。
ふくよかでコアなロリータファッションを愛する、V系バンドが大好きなある意味メンヘラだった不思議ちゃん。
Kちゃんは、Sさんに気に入られていることに気がついていて、確かに満更でもなさそうには見えた。
でも、基本的にイケメンしか受け付けないので、「好かれている」「女性として見られている」「期待されている」感が、楽しかっただけなのだろう。
ある日、Kちゃんがはや上がりすると、待ってましたとばかりにSさんもお会計。
Sさんの店への滞在時間を延ばすママと私たちをよそに、Kちゃんはさっぱり空気が読めず、急いで帰るでもなくのんびりとドアを出て行く。
さすがに引っ張り過ぎてはSさんも機嫌を悪くする、ママのため息と共に私に指令が下る。
「うたちゃんも上がっていいわ。Kちゃんを送ってあげて」
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