日常①

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「お前のこと、好きだって言ったらどうする?」 俺が投げかけた解のだせない問い。 友人Aの顔に映った複雑に絡まるあの表情を、 俺は今でも忘れられないんだ。 友達、恋愛、性別、 異質、異常、マイノリティ。 どの単語が、彼を苦しめたのだろうか。 いや、彼を苦しめたのは紛れもなくただの俺だったと、そう気づく前にもう彼は、俺の元から去っていた。 浅はかな俺の、過ち。 俺達は偶然同じ教室(しゅうごう)に閉じ込められていただけだった。セクシャリティの要素は共通部分を持たない空集合。 違いはいつか乖離を生む。 俺は身勝手にも、友人Aをこちら側へ、 乖離側へ引き寄せようとした。 だから、もう二度と誰も... お前もこちら側へは来てはいけないんだよ。 補習は残り2日。 これ以上、彼の気持ちを許してしまったら、 俺は更に自分のことを許せなくなってしまうだろう。
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