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「ずるくねーかよ! 気づいてただろ、本当はずっと前から。俺の気持ちに!」
大人げのない大人な態度で君の視線に気付かないふりをする。荒い声とは裏腹に、今にも泣き出しそうな顔で彼はそんな俺を責めた。震える唇があまりにも愛しくて、ふと抱きしめたくなる。でも、そんな身勝手を君も世間も許してはくれないだろう。
お前を傷つけてる。その自覚はあっても、
お前ごとダメにしてしまいそうで、俺はお前に触れられない。臆病でごめんな。
やっぱりそのままでないとダメだ。
君の人生は、このまま確かな煌めきを伴って
真っ直ぐに続いていくのだろう。
こんなところで、
カーブさせちゃいけない。
お前が狙うのは、ストレートど真ん中。
俺のグローブなんかには収まりきらない、
真っ直ぐな道だけだから。
さっきまで教室に差し込んでいた夕日の赤色は、
いつの間にか彩度を下げていく。
俯きただプリントを見つめる彼の頬に伝うのは汗か涙か、俺には知る権利がないだろう。
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