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「.....むず。」
彼は、悔しそうにぽつりと呟いた。
プリントを見つめて肩を落とす彼の姿は、
たとえ野球で鍛えた大きな身体をしていても
年相応に思えた。
そうだよな。難しいよな。
俺にだって難しい。
こうやって生徒にたくさんの問いを与え、
解法を示す立場でありながら、
自分は昨日の問いから逃げて、
見て見ぬふりをしてしまっている。
ずるい大人ですまん。
でも、その若さは俺には眩しすぎるんだ。
こいつはまだリスクというものを知らない。
俺に出来ることは、
大事な生徒の人生から、
無用なリスクを取り払ってあげることだけ。
正しい解答に導いてあげることだけだ。
なぁ知ってるか。
今、お前が解こうとしているその問題は、
解なしが正解なんだ。
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