補習2日目

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「.....むず。」 彼は、悔しそうにぽつりと呟いた。 プリントを見つめて肩を落とす彼の姿は、 たとえ野球で鍛えた大きな身体をしていても 年相応に思えた。 そうだよな。難しいよな。 俺にだって難しい。 こうやって生徒にたくさんの問いを与え、 解法を示す立場でありながら、 自分は昨日の問いから逃げて、 見て見ぬふりをしてしまっている。 ずるい大人ですまん。 でも、その若さは俺には眩しすぎるんだ。 こいつはまだリスクというものを知らない。 俺に出来ることは、 大事な生徒(こいつ)の人生から、 無用なリスクを取り払ってあげることだけ。 正しい解答に導いてあげることだけだ。 なぁ知ってるか。 今、お前が解こうとしているその問題は、 解なしが正解なんだ。
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