逆愛Ⅱ《洸弍side》

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ドラマの撮影で、住谷まりがMY学園によく出入りするようになった。 気付くと大空と話をしている気がする。 別に、俺には関係のないことだけど。 「あっ、洸弍先輩!」 住谷まりと廊下で話してた大空が俺に気付いて駆け寄ってきた。 「何だよ」 「英語得意でしたよね?どうしても分からない英文教えて欲しいんです。明日提出のものがあって」 「あぁ。俺は今日外出だから帰ってきたら教えてやるよ」 「マジで助かります!ありがとうございます」 大空がこの学園に来た時は、こうしてよく勉強を教えてやったもんだ。 それが大空に冷たくなってからはお互いに避けてたから、懐かしく感じる。 昔から英語が苦手なんだよな大空は。 「住谷まりがこっち見てるぞ。じゃあ俺は行ってくる」 そして俺は学園を後にした。 外出先での会議が終わって、戻ってきたのは17時過ぎだった。 まだ皆は生徒会室にいるだろうと思って、部屋に戻る前に生徒会室へと向かった。 瞬間、 遠くからでも見覚えのある人物が廊下にいた。 担任の山田雅鷹と… 「綾くん!」 「おぉ、洸弍!やっと会えた」 俺の大好きな人。 この人を忘れるために、ここにきたんだ。 「どうしたの?」 「あぁ、今日は雅鷹と飲むから迎えに来たんだ。ついでに洸弍の顔を見に来た」 綾くんに頭をわしゃわしゃと撫でられる。 久しぶりに会えて嬉しい。 嬉しいのに、 「洸弍も来るか?夜中まで飲むからいつでも来いよ。明日休みだし」 「行けたらね。でも綾くんに会えたからもう充分だよ」 「可愛いやつめ。行くぞ雅鷹!じゃあな洸弍。来たかったら連絡しろ」 「うん。じゃあね」 嬉しいのに、胸がときめいていない気がした。 いつも実家に帰って綾くんに会うと胸が高鳴るのに。 「洸弍先輩」 振り返ると大空がいた。 「大空…いたのか」 「さっきからいましたよ」 さっきからいたんだろうけど、綾くんと話に夢中になってて気付かなかった。 「英語だよな?お前の部屋でいいだろ?20時ぐらいに行くから用意しとけ」 「分かりました」 そして俺は自分の部屋に向かった。 綾くんに会えたことよりも、大空に勉強を教えようとしている今の方が嬉しく感じている。 頼りにされてるから? なぜかはよく分からない。 俺は風呂に入ってから大空の部屋に向かった。 「あぁ、なるほど!こう訳せばいいのか」 「それ基本の英文だから覚えとけよ。今後も使う」 「ありがとうございます」 こうして大空に勉強を教えてると、本当に飲み込みが早いなと思う。 生徒会に入れるくらいだから頭はいいんだろうな。 単純な奴だけど。 「ちょっと休憩しましょう」 そう言って大空は冷蔵庫からケーキを取り出した。 「クリュグ飲みます?」 「いらねぇよ」 あれを飲むと、気分がおかしくなる。 今飲んだら俺は何を言うか分からない。 だから遠慮した。 「上手いなこのケーキ」 「あのタルトには負けますけどね」 ケーキと紅茶を飲みながら休憩。 そういえば綾くんに飲みに誘われたな。 「もう21時か…」 あの人達は朝方まで飲むだろうから、俺じゃついていけないんだよな。 どうしてあんなにザルなんだ。 「洸弍先輩が今日話してた人って、神威綾ですよね?」 「あぁ。綾くんを知ってんのか?」 神威家はあまりメディアに出ようとしない。 稽古や芝居に専念するためだ。 「母親が好きなんで知ってます。知り合いですか?」 「兄貴の親友で家が近所なんだ。哀沢と山田雅鷹とも高校の同級生みたいだぜ」 兄貴の親友というよりも、兄貴の恋人。 俺の大好きな人。 「いつも抱かれてるときに言ってる『リョウくん』って…神威のことですか?」 いつも目隠して大空を綾くんと思いながら抱かれている。 そういえば、大空に綾くんのことを教えたことは無かった。 まぁ、聞かれなかったし。 「そうだ。お前の体格は綾くんに似てるからな、勘違いもしちまう。好きな人だからな」 「神威に抱かれたことあるんですか?」 「まぁ、何回かはある」 もうしばらく実家に帰ってないから、綾くんに抱かれることも無いけど。 でもまだ綾くんが好きだから大空を利用したんだ。 目隠しを条件にして。 「お前こそ慣れてるよな?何人ぐらい抱いてきたんだよ」 「男を抱いたのは洸弍先輩が初めてですよ。女は…10人ぐらいですかね?」 「住谷まりとか?」 「あぁ…まりちゃんは俺の初体験の相手ですね」 まさかと思って出した名前がヒットした。 大空が住谷まりと話してるのでさえ、いい気がしないのに。 「まりちゃん実は俺の4つ上なんで、俺が13の時に誘われてヤッたんです。彼女からは色んなこと教わりました」 「10人ってまさか全員事務所の女か?」 「そうですね。来るもの拒まず、別に好きな人もいなかったんで。俺から誘うことは無かったですけど」 大空は「母親に知られたら殺される」と笑いながら俺に言った。 だからこいつは手慣れてたのか。 その瞬間、大空の携帯が鳴る。 「はい、何?ちょっと今勉強しててさ…」 女だろうか、とか考えてる自分が嫌だ。 もう勉強も一通り終わったし、大空の電話は終わりそうにない。 部屋に戻るか。 その瞬間、俺の携帯が鳴った。 綾くんだ。 『おい洸弍!こっち来ねぇのかよ』 「行けたら行くよ」 『待ってるからな!』 そう言って電話を切った。 相当酔ってる声だったけど。 大空の電話が終わりそうに無かったから、ノートの余白に『帰る』と書いて部屋を出ようと席を立った。 「待っ…」 ドアを開けようとした瞬間、大空が後ろから俺の手を掴んだ。
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