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逆愛Ⅲ《洸弍side》
最近、大空に避けられている気がする。
気のせいかもしれないけれど。
「次の日曜は何してんだ?」
生徒会が終わり、部屋に戻ろうとしている大空に話かけた。
「いや、特に…」
「じゃあ映画見に行こうぜ。お前が続編見たいって言ってたやつ」
半年前にやっていた映画の続編が上映された。
前に大空が、早く続編が見たいと言ってたのを覚えていたから誘った。
「あ…日曜は誠と一緒にカラオケ行くんだった。すいません、映画はまた今度」
「…そうか。なら仕方ねぇな」
最近、こんな感じで会話が終わる。
毎日、必要最低限の会話しかしなくなった。
「じゃあまた明日な」
「はい、お疲れ様でした」
そう言って部屋に戻った。
いつから抱かれてないんだろう。
あいつからは誘ってこないし、俺から誘っても断わられる。
何かしたのかな、俺―…
日曜日。
部屋に居ても気持ちが晴れないままだから、本屋に行くことにした。
欲しかった小説が発売する日だしな。
「あれ、寺伝さん?」
聞き覚えのある声に呼ばれて振り返ると、そこには天野がいた。
「天野…大空も一緒か?」
「嵐?いや、俺ひとりですよ」
「カラオケ…するんじゃねぇの?」
「そんな約束してないですよ」
つまりアイツは、俺に嘘をついたってことか。
そんなに俺が嫌いか?
嘘をついてまで、一緒に居たくないってことかよ…
「どうかしました?」
「別に。何でもねぇよ」
「寺伝さん暇ですか?俺、やる事ないんで喫茶店でも行きませんか?」
天野にそう言われて、俺はその誘いに乗った。
天野はコーヒーを飲みながら俺に言った。
「最近、嵐に優しくなったそうじゃないですか」
「まぁ…冷たくする理由なくなったからな」
優しくなったというよりも、殴る理由がなくなったから。
俺はむしろ謝りたいんだ大空に。
「お前の誕生日パーティーの時、宮本に聞いたんだよ」
「何をですか?」
「大空の過去をだ」
いじめをしていたのは事実。
けど、その馬鹿な行為に気付いていじめを辞めようとして、友達に裏切られた大空。
あいつは過去を悔やんでる。
「思い出さないんですか?竹内さんのこと」
「大空は違う。さくらをいじめてた奴とは。宮本を見れば分かる」
いじめられてたのに、あんなに大空のことを笑顔で話してた宮本。
もしかしたら、さくらもあんな風に笑えてたのかもしれない。
今さらもう遅いけど。
「大空は俺が思ってた奴と違かったよ」
「それは嵐に言いました?」
「避けられてるから謝るに謝れないんだ。まぁ、嫌われて当然なんだけどな」
今まで俺がしてきた仕打ちは、大空にしてみれば理不尽過ぎただろうから。
あいつが編入してきた頃みたいに戻れたらいいのに。
仲の良い先輩後輩に戻れたらいいのに。
「嘘ついてまで俺の誘いを断るくらい避けられてるしな」
「何か理由があるのかもしれませんよ?」
理由…
避けるのは、俺が嫌いだからだろ?
それしか考えられない。
「まぁ、嘘つかれたのは納得いかねぇから問いただす」
天野はニコニコしながらコーヒーを飲んでいた。
それから天野とは分かれて、学園に戻った。
大空は出かけている様子で、大空の部屋の前で待つことにした。
「洸弍くん、どうしたんですか嵐の部屋の前で?」
大空の担任の足利槞唯が偶然通りかかった。
俺はこの教師が苦手だ。
「いや、大空に用事があって」
「携帯に連絡しましたか?」
「繋がらないんで、毎度のことながら充電切れてるんじゃないですかね」
あいつの携帯の電池の減りは半端ないくらい早い。
まぁ、同じ機種を6年ぐらい使ってるって言ってたしな。
「そうですか。早く帰ってくるといいですね」
「ですね」
そう言って足利槞唯は去って行った。
俺がこんなとこで待ち伏せしてるのも、他の奴からしてみれば変なんだろうな。
早く帰ってこい。
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