第4話 陛下の寝室とワイン

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第4話 陛下の寝室とワイン

 シェリーと陛下直属部隊の騎士長のセドリックはディナーの後でともに歩いて話をしていた。  ……が、シェリーの頭の中はそれどころではない。 「つきましては、明日以降の……シェリー様?」 「あっ! へ?! あの、すみませんぼうっとしていました」 「まあ、明日またきちんとお話いたします」 「すみません、ありがとうございます……」  そうこうしているうちに廊下の突き当りにたどり着いた。 「ここが陛下の寝室です」 「あ、ありがとうございます」  ジェラルドの寝室までの案内をしてもらっていたシェリーはセドリックに挨拶をする。  その様子を見て会釈をしたあと、セドリックはその場を去っていった。 (どうしましょう……! ここがジェラルド様の寝室。そっと開けたほうがいいわよね?)  その心の言葉通り、そーっと中を伺うようにドアを開けると中にはガウンを来て夜着になっているジェラルドがいた。  その姿は遠目から見てもドキリとして心臓が飛び跳ね、思わず顔が赤くなってしまう。  すると、ドアの隙間から自分を見つめる視線を感じたジェラルドはふっと笑って声をかけた。 「シェリー、おいで」 「は、はいっ!」  シェリーはドアを開けて中に身を入れると、そのままドアを閉めてゆっくりとジェラルドに近づいていく。 「ひどく緊張しているようだが大丈夫かい?」 「いえ、その……」 「ふふ、大丈夫。取って食ったりしないから、そこに座ってごらん」  そうすると自分の横にある椅子に座るように促して、うすはりのグラスに入った赤ワインをシェリーに手渡す。 「ワイン、お好きなんですか?」 「ああ。それにここから見える月を眺めてゆっくりと飲む酒が好きでね」 「…………」  シェリーは自分の手にあるワインを眺めると、その水面には自分の顔が映っている。  横からジェラルドは何かに納得したように声をかけた。 「もしかして、酒は初めてかい?」 「いえ、社交界で少し飲んだことがあるのですが、味の良さが私にはわからず」 「構わないよ、もし苦手なら無理して飲まなくてもいいし、気に入ってくれたら飲んでもいい」 「は、はい……」  実のところシェリーは社交界で飲んだ酒が美味しいとは感じなかったが、その言葉を聞いて彼女は一口飲んでみる。 「──っ!」  一気に口いっぱいに広がる芳醇な香りと渋み、そしてその中にわずかにある甘味が心地よくシェリーは驚いた。 「美味しい……」 「よかった、君とワインを一緒に飲みたかったんだ。気に入ってもらえたみたいだね」 「はいっ!」 「これは北方の辺境地で採れるブドウを使ったワインでね、ここのはあまり流通がしない希少価値が高いものなんだ」 「そんな貴重なものよいのですか?」 「ああ、実は北方の辺境地を治めているのが私の叔父でね、先日の誕生日にくれたんだ」 「そうでしたか」 「だから、君が私の婚約者となったこの特別な日に飲むのにふさわしいかと思ってね」  そう言いながら、ジェラルドは一口ワインを口に運ぶ。  それを見て同じようにシェリーも一口飲むと、二人は目を見あって微笑み合った。 「私の婚約者になってくれてありがとう」 「私も、あなた様の婚約者になれて嬉しいです」  二人はその後もワインをゆっくり飲みながら、語り合って楽しんだ──
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