第6話 王妃という重み

1/1
前へ
/23ページ
次へ

第6話 王妃という重み

 朝食が済んだ後、ジェラルドは公務へと向かい、そしてシェリーはセドリックに連れられてある部屋に向かっていた。 「セドリック様、これから私は何を?」 「陛下の婚約者、ひいては未来の妃ですから、妃教育を受けていただきます」 「妃教育……」 「はい、つきましてはこの部屋で毎日鍛錬を積んでいただきます」  そうしてセドリックはドアを開けると中にはいかにも厳しそうな眼鏡をかけた女性が立っていた。 「お待ちしておりましたわ、シェリー様」 「では、ウェールズ女史、あとは頼みましたよ」 「お任せくださいませ」  セドリックはそう言い残すと自身はジェラルドの元へと向かった。  残されたシェリーは目の前にいる女性──ウェールズ女史に向かってカーテシーで挨拶をする。 「ごきげんよう、ウェールズ女史」 「ごきげんよう。私のことはクラリスと気軽に呼んでくださいませ」 「か、かしこまりました」  意外ときさくそうな雰囲気に少し安堵したのもつかの間、クラリスは机に山積みになっている本を何冊か抱えると、そのままシェリーに手渡した。 「──っ!」  あまりの重さにシェリーは前のめりにこけそうになるが、慌てて上半身をうしろに傾けてバランスを取る。  クラリスはその様子をほとんど見ることもなく机の方に戻ると、本の上に手を置いてシェリーに告げた。 「シェリー様、あなたの妃教育を厳しくしてほしいと陛下とセドリック様より賜っております。厳しくいきますので、お覚悟を」  その真剣な目つきにシェリーは少しすごんでしまったが、負けじと大きな声で返事をする。 「はいっ! お願いします!」 「あなたはどんな思いでこの妃教育を受けるのですか?」  そう言われて、シェリーは少し困った表情を浮かべた。  しかし、次の瞬間には昨日の夜にジェラルドと一緒に眺めた月と、ジェラルドの横顔、そして呪いで苦しむ彼の表情が浮かんだ。  そうして、彼女は強い目をクラリスに向けて覚悟を語った。 「私は、ジェラルド様のお役に立ちたいです! 立派な妃となり、あの方をお支えできる立派な王妃になりたい!!」  その言葉を聞き、クラリスは満足そうな表情を浮かべると、シェリーに任務を与えた。 「では、その手の中にある文献を1週間で読み、そして全て覚えてください!」 「はい……?」  早くもシェリーの心は打ち砕かれようとしていた──
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

316人が本棚に入れています
本棚に追加